フリーペーパー「あかうしのあくび」連載4回目の今回は、多くの観光客を魅了させる、やまなみハイウェイからミルクロードをご紹介します。車では気づくことのできなかった景色を、サイクリストの目線から紹介します。
ミルクロードの魅力
阿蘇では1年間の草原の移り変わりを見立てて5つの季節があるといわれています。
春季の新緑、夏季の緑、秋季の黄金色、冬季の灰色、そして毎年3月に草原に残る枯草を焼く「野焼き」によって真っ黒になる「野焼季」になります。阿蘇の風物詩ともいえる草原を維持するための野焼きが終わると阿蘇は春を迎え、焼けた草原から新芽が出て少しずつ新緑になっていきます。この変化に富んだ大草原と、眼下に広がる阿蘇の街並みの先に、噴煙たなびく阿蘇五岳という大パノラマを眺められるのがミルクロードになり、阿蘇サイクリングの中でも極めつけのルートになります。今回はやまなみハイウェイの合流地点から二重の峠までの一番眺めの良い27kmのミルクロードを走る66km・獲得標高1087mのコースを紹介します。
ミルクロードは菊池郡大津町から阿蘇外輪山を上り稜線を伝って阿蘇市波野に至る全長47kmの道路の通称であり、草原に点在する牧場の牛乳を運ぶ農道を整備されたことから牛乳の道、ミルクロードと名付けられました。沿線上には見晴らしのいい草原地帯が広がり、6カ所の展望所(東側から城山展望所・大観峰・スカイライン展望所・北山展望所・かぶと岩展望所・二重の峠展望所)からは違った角度から阿蘇五岳を眺めることができます。
今回のコースは、やまなみハイウェイを上り、東側から各展望所の眺めと、ミルクロードを走りながら次々と目に飛び込んでくる壮大な景色を楽しみ、国道57号の開通により車が少なった二重の峠を下ります。阿蘇谷からは的石茶屋跡や、ラピュタの道の入口となっていたツツジが美しい長寿ヶ丘公苑など外輪山の麓の道を通ってゴールします。阿蘇谷とミルクロードを結ぶ道は2016年の熊本地震までは6つの路線がありましたが、ラピュタの道は地震の影響で道路が崩落し現在も通行止めのまま危険なため立ち入り禁止となり5つの路線になっています。
城山展望所
北山展望所
5月には長寿ヶ丘公苑のツツジが見頃になります。
7月から9月にかけてミルクロードでユウスゲを見ることができます。開花するのは夕方から咲き、翌朝にしぼんでしまうので朝のみ見ることができます。
早朝ライドこそミルクロードの最大の魅力
ミルクロードは1回走ったら終わりではなく、季節や時間帯ごとに魅力のある風景を楽しむことができます。なかでもお勧めなのがミルクロード沿いの展望所から日の出を鑑賞する早朝ライドです。真っ暗な峠道を上っていくと徐々に明るくなり、ミルクロードに出る頃になると東の空が淡い赤色、オレンジ色、ピンク色の層がグラデーションとなり、まばたきするたびに明るくなる幻想的な日の出はミルクロードの最大の魅力です。
運が良ければ更に究極の感動を与える雲海遭遇もあります。阿蘇谷が濃霧だったら雲海を見るチャンスです。真っ白の視野がない峠を上るといきなり飛行機で雲を抜けたように薄っすらと明るい空になり目を凝らすと星がきらめき、振り返ると一面が雲に覆われ波打つ雲海に浮かぶ阿蘇五岳、その一角から日の出が射すドラマチックな大自然の物語を目の当たりにすることができます。
大観峰から見た雲海はお釈迦さんが寝ている姿に見える涅槃像の阿蘇五岳が雲の上に浮かんだように見えます。
日の出のあとは朝陽のパワーを浴びながら、引き締まった空気と爽快な景色により、快感が頂点に差し掛かると「思わず叫びたくなる」と、私を含めて早朝ライドを体験した方はよく言われます。よって達成感に酔うためにも衝動を抑えずに大声で何度も叫んで走ることをおすすめします。
ミルクロードから日の出を見るには自分の脚で行ってこそ感動と達成感に浸ることができます。そのためには真っ暗な中スタートして212号なら6.6kmの坂を440m上らなければなりません。それも街灯に照らされる都会の道とは違って、くっきり星が見える暗さですから前後のライトは必須で尚且つ遠くからでも視認できるライトが必要となります。少し高価にはなりますが、自分の命を守るためにも存在感を示すリアライトと、フロントは予備を含めて2灯で、メインとなるのは400ルーメン以上のライトがおすすめだと思います。コースとしては大観峰(道の駅阿蘇から14km)や、かぶと岩展望所(道の駅阿蘇から20.5km)で日の出を見るとなると212号を通ってミルクロードに行くのが最短です。長い距離が苦手な方や時間が取れない方は日の出を見て折り返すコースもおすすめです。