道の駅サイクルアドバイザーの「コルナゴ部長」こと中尾公一さんからサイクリングレポートが届きました。今回は「鬼滅の刃2ndライド試走」です。
2020年11月に開催した福岡県八女市の魅力発見と、九州北部豪雨で被害を受けた星野村の活性化を目的に、熊本地震による阿蘇復興ライドを何度も開催された久留米のKeiさん企画による『コルナゴ部長と行く♬日本の伝統文化と「鬼滅の刃」聖地巡礼ライド』の第2弾となる『鬼滅の刃2ndライド聖地巡礼、柱への挨拶周り♬』の試走に行ってきた。
2020年11月筑後市の溝口竈門神社での「鬼滅の刃聖地巡礼ライド」の模様
星野村からスタートした昨年の第1弾『コルナゴ部長と行く♬日本の伝統文化と「鬼滅の刃」聖地巡礼ライド』は、おもちゃの日輪刃がゼッケン代わりのコスプレありのキャラ立つライドだった。エイドで立ち寄った店舗の方や沿道の方、それに「鬼滅の刃」の聖地とされる溝口竈門神社での多くの参拝の方など、出会ったみなさんから笑顔の応援をいただいた。コロナ渦の中、このようなコスプレが推奨されるキャラクターライドは、自転車乗りは幸せ感に浸り、地域の方には笑顔を届ける実体験だった。
第2弾となる『鬼滅の刃2ndライド聖地巡礼、柱への挨拶周り♬』のコンセプトはまた別の機会に紹介するとして、開催時期はコロナの状況次第だが夏頃を予定し、走行距離は第1弾の平地60kmから倍の120kmになり、広範囲で「鬼滅の刃」のスポットや隠れた名所を巡りながら、高良山や八女中央大茶園のヒルクライムや、筑後川沿いでは先頭交代(ローテーション)をしながらのグループ走行を想定している。よって走行に支障がない鬼滅イメージのゼッケン等の配布や、コスプレしたい参加者はパールイズミなどが販売する「鬼滅の刃」がデザインされたサイクルウェアや小物程度を推奨する予定だ。
試走は久留米市内をスタートして佐賀市内から筑後市の溝口竈門神社を経由するルートで走ってきた。参加したのは企画された久留米のKeiさん、レジェンド福島雄二さん、福岡の裕介くん、福岡のトキコさん、熊本のタカコさんに私の6名。この日は異常に暑く最初の高良山に上ろうとした時点でコスプレのタカコさんは衣装を断念、やはり本格的なキャラクターライドは涼しい季節に限られる。
高良大社は南北朝時代に御醍醐天皇が派遣した征西将軍懐良親王とそれを支える菊池一族によって南朝が九州を支配する最前線基地になっていた。そして15代菊池武光が亡くなったとされた地でもあり、菊池市で生まれ育った身としては特別な思いがある。
歴史は苦手だったが、北方謙三さんの「武王の門」をきっかけに菊池の歴史に興味持つようになった。懐良親王と菊池武光が卓越した戦術で九州を統一し、戦乱が止まない日本から九州を独立王国にすることを目指した2人の夢に痺れた。北方さんの歴史物はこの本から始まった。自身のルーツを調べていると佐賀の東松浦党に辿り着き、縁が深かった菊池一族に興味を示され「武王の門」が書かれた。
高良大社は久留米ツツジの群生地であり樹齢200年の原木もある。
時期は過ぎたが久留米市内の池町川沿いの里桜のアーチを見て、筑後川に近い真木神社の水天宮へ行った。天気も良く節句祝いの家族が華やかだった。
筑後大堰を渡り筑後川沿いの諸富西島線でスピードを上げて先頭交代のグループ走行が始まった。途中までは付いて行けたが後半千切れてしまった。雄二さんは軽く走られていたし、トキコさんも強くて練習不足の現実だった。
大川家具で有名な大川の特産品やカフェもある「TERRZZA」の極上アイスでクールダウン。ここは福岡サイクルステーションであり自転車乗りに優しいスタッフさんだった。
目の前には国指定重要文化財の筑後川昇開橋
1935年に開通した旧国鉄・佐賀線の鉄道橋は、筑後川の下流とあって有明海の干満の差により建設は困難だったようだ。現在は福岡県大川市と佐賀県佐賀市を結ぶ観光拠点的な存在で船を通す可動橋は1日に8回観光を目的に可動している。可動橋は自重48トンもあるのに、平衡ワイヤにより音もなく昇降する様は当時の技術の高さを物語るようだった。
対岸は佐賀市、渡ってすぐの橋の駅ドロンパで休憩し、旧国鉄・佐賀線跡を総延長約5kmの歩行者・自転車専用道路として整備された「徐福サイクルロード」を走った。桜並木の新緑が美しく、春は桜のトンネルと花吹雪、夏には日陰となって涼しく、冬は葉が落ちて陽当たりがいいだろう、四季を通じて楽しめるサイクリングロードだ。
佐賀大学の前を通って浄土寺の塀に描かれた壁画を見に行った。
描かれたのは、佐賀大学文化教育学部美術工芸過程大学院を修了後に、永住資格を取り、美術教室の講師をしながら画家として活動されている中国人画伯の尹雨生(イ ウンセイ)さん。
壁画には龍や亀などいろんな生き物が描かれ隠し画のようでもあった。
呉服元町のシャッター絵を見て佐賀城に寄り、コッペパンの人気店へ
佐賀駅バスセンター前の「あんバター∞えんバター」
コッペパンにいろんな具材をその場で挟んで提供する店。
メニューが多くて何を注文していいか分からないので、Keiさんにお任せして全員定番のあんバター。つぶあんに角切りのバターが3切れあって、つぶあんの甘さとバターのうま味と塩分のバランスが絶妙、軽い補給にいい感じだった。人気店の行列の店はパンが売り切れ次第クローズと書かれていたが、食べ終わったらちょうど閉店になってラッキー。
佐賀市役所の前のD51を眺めて風浪宮から恋木神社へ
「鬼滅の刃の聖地」とされるところがいくつもあるらしく、福岡県の鬼滅の刃3社参りといえば大宰府の宝満山竈門神社、この後に行く筑後の溝口竈門神社、そして甘露寺蜜璃の神社と噂されるここ筑後の恋木神社という。
参拝に来ている人は若い女性やカップルが多く、やはり「鬼滅」人気だろうか、
水田天満宮は福岡と熊本の共に戦った武将のゆかりの地らしい。
まだ先は長い。暖かいもので腹を満たしにKeiさんおすすめの安くて美味しいみやまのソウルフード「大力うどん」へ行った。店内に入ってすぐ40年前の学生の頃よく通っていたうどん屋の記憶が蘇る雰囲気。そしてお値段が驚き。かけうどんが180円、たぬきが200円、ごぼう天が300円と格安もあって、広い店内は満席近いが回転は早く、スタッフの誘導がてきぱきしているので客は次々入れ替わる。Keiさんおすすめは、カレーうどんに肉と卵のトッピング。
混雑をよそに注文してまもなく運ばれてきた。目の前に丼を置くとまぶしいほどの光景。Keiさん曰く「いきなり混ぜないこと、最初はカレーの出汁を、次にうどんだけ、そして甘く煮た肉を混ぜ、最後に生卵を溶かしてすき焼き風に、はいどうぞ!」
全集中で熱々のカレー出汁のスープをひとすすりしてから、胸をときめかせて太めのうどん麺をじゅるっと。あとは混ぜ具合を変えながらほとんど無言で食べ続けた。具材の混然一体感もよし、カレー少なめのうどんすき焼き感もよし、出汁、もちもちの麺、今思い出すだけでよだれがとまらない。
夕暮れに筑後の溝口竈門神社に到着した。さすがに平日のこの時間には誰もおらず静かな無人の神社だった。お社を支える樹々も時間が止まったようにひっそりとしていた。右に小さな社務所ができていた。「鬼滅の刃」の聖地として多くの人が訪ねているためだろう。これからの夕方の夜間走行に備えて前後輪のライトを確認し神社を後にした。
溝口竈門神社を出てしばらく進むと先頭を走るKeiさんがみんなを止められた。何だろうと思って言われるまま振り返ると夕陽がちょうど神社の方角に沈んでいた。華麗な黄昏、そんなちょっと感動の光景だった。
第2弾となる「鬼滅の刃聖地巡礼ライド」の今回の下見は、そもそもいい歳になってすることかという疑問も1回目に誘われたときに思いもしたが、前頭葉の刺激のため「何事もやってみないと分からない主義」なので、実際に走ってみたら、自転車乗りと出会った人との距離が無くなって、すぐに話し掛け、話し掛けられる喜びと笑顔を届ける実体験だった。
久留米市の陸上競技場に着いたのは20時近くになっていた。多くのみなさんとお話しすることができた。隠れた名所のサプライズ、そして「鬼滅の刃」を深読みしたKeiさんのコンセプトはまた別の機会に紹介するとして、なるだけ車の少ない道をいいペースで走った120kmは、やっと終わった安堵感と、真っ暗になってのゴールは、ちょっとした冒険から無事帰りついた、そんな達成感に溢れた下見だった。
道の駅阿蘇ではコスプレイヤーや、撮影されるカメラマンを歓迎し、阿蘇の豊かな自然や由緒ある歴史建造物を背景にした撮影の楽しみや交流をサポートする企画を昨年より実施している。そこで地域の復興や、活性化を目指すキャラクターライドを、阿蘇の地でも開催しようと今回下見に参加したメンバーで話が進み、コスプレした「鬼滅の刃」や、阿蘇が舞台となった「弱虫ペダル」のキャラクターライドを開催しようとなった。再建が進む阿蘇神社と、阿蘇地域の最後の復興となる2022年開通の南阿蘇鉄道の沿線を走って笑顔を届けたいものだ。
一人ひとりが多様な趣味嗜好を持つ時代に沿うべく阿蘇サイクルツーリズムは、カルデラの中や阿蘇地域の様々なルートで走るサイクリング、ヒルクライムレース、草原ライド、MTB・e-MTBライド、グラベルライド、食や体験とのペアリングライドなど、いろんなタイプのサイクリストの顕在するニーズや、阿蘇を自転車で楽しみたい方の潜在的なニーズに応えていきたい。そのなかにキャラクターライドも定番化できればと思う。
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