阿蘇の飲食店に行くと多くの店で「高菜めし」と書かれたのぼりを目にします。阿蘇グルメの定番として人気が高い高菜めしですが、元々は地元で日常食として食べられていた家庭料理。これを飲食店のメニューとして初めて提供したのが『あそ路』なのです。
あそ路の「たかなめし定食」(1430円)。こんもりとしたお椀型の盛りつけは米塚をイメージしています。高菜の古漬けをタケノコと一緒にしっかりと炒め、アツアツのご飯と混ぜるだけ。調味料もしょう油と少々の塩のみで、高菜の持つうま味を最大限に楽しめるシンプルかつ奥深い料理です。だご汁や名物のホルモン煮込みなどとセットになっています。単品の「元祖たかなめし」(580円)もあります。
味の決め手である高菜漬けは自社で製造しており、素材となる高菜も自社で栽培しています。九州で高菜栽培を行っている地域は多いですが、阿蘇で栽培される高菜は日本在来種。毎年10月末頃に種をまき、3月頃に収穫されます。厳しい冬の寒さの中でうま味を閉じ込めた阿蘇の高菜は茎が細く、収穫のタイミングの見極めが難しいため、すべて手摘み。阿蘇ではこの作業を高菜折りと呼んでいます。一年分をその時期だけで収穫するため、親戚総出での作業になるそう。漬け物樽への仕込みも重労働。その量なんと110樽、13トンというから驚きです。さすがにここまでの量ではありませんが、一般家庭でも高菜を漬ける伝統は残っており、春にはホームセンターの店頭に漬け物樽が山積みされる光景が見られるそうです。乳酸発酵が必要な古漬けができあがるまでは約半年。早くても秋頃ということなので、種まきから一年という期間をかけて私たちの口へと運ばれて来るのです。
今年、新メニューとして登場した「あか牛の陶板焼き」(1320円)。今や阿蘇のブランド食材として筆頭にあげられる、あか牛の肩ロースを使用しています。陶板なので均一に火が通り、やわらかくジューシーに焼き上げることができます。また、このメニューは「馬刺し」(1320円)と共に災害復興支援メニューになっており、収益の一部が新型コロナウィルス対策と令和2年7月豪雨の復興支援として寄付されます。熊本・阿蘇名物を食べて、被災地を応援しましょう。
創業50年以上の老舗を切り盛りする、三代目店主の井芹正吾さん。看板である「たかなめし」も創業当時からあるメニューで、創業者の母親、正吾さんの曾祖母に当たるサキばあちゃんが作っていたレシピを元にしたもの。「当時の農家は、大人は皆忙しかったですから。たくさんの子ども達のために手早く作れる料理として、よく食べさせていたようですね」。味付けも作り方も当時のやり方を忠実に守り続けています。「高菜は阿蘇に春の訪れを告げる野菜です。収穫や仕込みは手間がかかるし大変ですが、漬け方や味付けを変えずに守るのは、阿蘇の文化を守ることでもあるんです」と正吾さん。一見素朴なようでいて、他にはマネできない美味しさは、阿蘇の自然そのままを味わっているようでした。
【基本情報】
住所:熊本県阿蘇市的石1476-1
電話番号:0967-35-0924
営業時間:午前11時〜OS午後3時
定休日:月曜日(祝日の場合営業)
■あそ路