道の駅阿蘇サイクルアドバイザーのコルナゴ部長こと中尾公一さんに、阿蘇の達人が伝授する、風向きを事前に調べて安全に楽しむ「阿蘇の噴煙眺める三峠越え」をレポートしていただきました~
阿蘇の穏やかな景色の中に青空に昇る阿蘇中岳の噴煙が加わった。
わたしが住む火口から30キロ離れた菊池市にも風向きによって火山灰が降ってくる時もある。そんな日は洗濯物を外に干せないし、窓も開けられないため、風向きや降灰の予報サイトを見るのが毎朝の日課になってきた。
そうなると、「阿蘇でサイクリングなんて出来るのか」と、思うところだが、噴火当初は北東の風だったので、坊中線や赤水線で草千里や阿蘇山西駅など火口近くまで行っていた。最近はずっと北西の風が続いており、火口から北東や南東の方面では全く降灰の影響がなくいつもと変わらない阿蘇サイクリングができる。中岳の4〜5キロ先の箱石峠や日ノ峠からは、灰色がかった噴煙が一定ではなく、不規則に、時に薄黒く、まるで生き物のように空に吐き出されているのが見える。それは誰しもが地下深く眠っている途方もなく巨大な火の塊の存在を感じるのではなかろうか。
阿蘇サイクルツーリズム活動をサポートしてもらってる自転車仲間から火山に関する情報を教えてもらった。それは自転車という無防備な乗り物では火山に近づかず、離れたところから見てリスクを減らすということだった。規制区域は兆候や経験則というセオリーで決められたもの、経験則は破られるのはふつうであり理論ではない。単に人間が決めたものに絶対安全という「絶対」はないということだった。
わたしは飛行機には出来ることなら乗りたくはない。離陸の時の浮遊感、突然の気流の変化なんて死にそうなくらい怖い。でもツール・ド・沖縄に行くのに船旅は有り得ないし、海外遠征も今後続けて素晴らしい景色をこの目で見てみたい。しかし、国の基準や厳格な規制を満たしていても墜落の可能性は「絶対」ないとは言えない。その危険を承知でわたしは飛行機には乗るが、リスクを減らすために航空会社は選ぶようにしている。同じように噴火活動中の阿蘇を自転車で走ることについても火口から距離をおいて、巨大な火の塊の息吹と共に、阿蘇の雄大な自然に触れ合うことも個人の選択肢として確かに必要だろう。火口から離れてからこそ雄大な景色を堪能することができるコースもあるわけだから。
先日、某BSの名山縦走番組で中岳山頂から中岳第一火口を俯瞰する映像を見た。中岳火口へは阿蘇山公園有料道路(自転車は無料)で何度も自転車で登っているが、中岳山頂から見る火口の眺めは初めてでその雄大さに感動した。富士山に登っては富士の景色は拝めない。雲海に浮かぶ涅槃像に見立てた阿蘇五岳もカルデラの対岸に当たる大観峰や付近のミルクロードからしか眺めることはできない。ちょっと距離をおいた方がより阿蘇の雄大な自然に触れ合うことが出来るはずだ。
自然を敬い、景色を愛でる山岳信仰アミニズムの流れるこの邦では、山岳は諸人禁制の修験道の場であったのはつい百年程前のこと。雄大で時として猛々しい自然に敬意を払い、その分ちょっと距離をおいてもっと楽しむ、無事に思い出を持ち帰るための鉄則の一つ、自転車乗りの心得でもあろう。というとで、前職の時に何度も利用してもらった2組の方に誘われて阿蘇を走ってきた。今回は2日間とも同じコースとなる火口から距離をおいて走る「阿蘇の噴煙を眺める3峠超え」の紹介だ。
南東の風対応の阿蘇3峠越え
道の駅阿蘇→小嵐山の峠→草原の道→県道45号→やまなみハイウェイ→ミルクロード→国道57号→町古閑牧野道→箱石峠→国道265号→日ノ尾峠→阿蘇神社・門前町→県道110号・国道212号→道の駅阿蘇
道の駅阿蘇をスタートして噴煙がよく見えるルートを選んで小嵐山に向かった。
ミルクロードから見るのとは桁違いの迫力だ。(火口から9キロ地点)
8月9日に案内したのは東京の津田さんグループ
翌10日は北九州の山家さんグループ
二組の方とも阿蘇に伝わる礼拝の儀式や、コンタクト探しをしているのではなく、「この小嵐山の峠道は阿蘇山につながっているかのように見えますよ」と、案内して写真を撮られている。
小嵐山の峠(火口から10.5キロ地点)
小嵐山からミルクロードの下を通って草原の道へ。
クルマがほとんど通らず放牧の牛を眺めながら草原の中を突っ走るこの道がわたしは一番好きだ。
県道45号に出たら右折してやまなみハイウェイを阿蘇方面に下るとキャンピングカーのエアストリームが見えてくる。
「阿蘇の森」で補給。
テラスで休憩もいいが2階があって
360度パノラマビューの 2階での休憩がおすすめだ。
ランチは「阿蘇の森」から1キロほどの「阿蘇やまなみ夢広場」
この時期におすすめなのが冷やしうどんだ。一見、普通のうどんのように見えるが、麺はもちろん、つゆも冷たくて、ごぼう天も冷たくカリカリの食感になっている。つゆも全部いただいたら塩分と水分補給にもなる。
ここからやまなみハイウェイを下り、「エルパティオ牧場」を過ぎ右折したら、クルマが少なくなり見晴らしいもいいアップダウンが続く。そこでは全開のアタックごっこが面白い。
57号に出たら右折し1キロほどで「食事処峠」の手前が町古閑牧野道の入り口になる。
杉林を抜けると放牧の牛を止めるための「牛止め」が2箇所あり必ず自転車から降りて通ること。
箱石峠の上のアンテナが目印のところが一番のビュースポットだが、このガードレールの横は牧野組合の方が草を刈ってありそこからが絶景。
西に流れる噴煙もよく見える。(火口まで6.5キロ地点)
風が吹き上げるところなので、汗で濡れたジャージのジッパーを開けるとすぐに乾く。ここでは時間をかけて景色を楽しみたい。
265号に出て135号の合流するところから2.4キロ下り、阿蘇南部広域農道から3.5キロで阿蘇山の中央火口丘の根子岳と高岳の間にある日ノ峠入り口となる。
集落を抜けて鍋平キャンプ場を過ぎると牛止めと鉄条網で仕切られた放牧地になり、いよいよ日ノ尾峠の上りが続く。頂上まではセメントの荒れた道だが、峠の先からは水害や地震で改修されところはアスファルト道となる。クルマはほとんど通らず登山禁止のため人もいない。聞こえるのは鳥の声と落ち葉や枝を踏むタイヤの音、静かな静かな山の道だ。
この峠道は阿蘇と南郷(高森や南阿蘇)を結ぶ道として古来から重要な役割を果たしてきた。かって南郷方面の人々は阿蘇神社詣でや宮地郡役所へとこの峠を往来する主要路だった。大正8年、北野繚之助 「根子岳」 (雨の火ノ尾峠)には当時は茶屋もあり、その真下には17戸ほどの寒村、火尾村(日ノ尾)があったという。火山灰の土地を耕し、噴火の度に火山灰がよく降り、生活するには厳しい環境だったが、阿蘇氏がここを関所のようにして藩士の一部を住まわせ、その末裔の人々が住んでいたと記してある。
消えた集落、日の尾村、峠道からは杉林以外何も見えないがグーグルマップには「天狗神社」がある。図書館で調べていたら、岩下平助編著「根子岳山麓に生きて」には当時、東往還と呼ばれた265号と西往還の日ノ尾峠の間に集落の地図がありそこには天狗堂と書かれ、分教場や水車小屋、鍛冶屋まであったようだ。そんな当時を想像しながら走るのがこの峠道の好きな理由である。
放牧地の中の道のため普通に牛がいる。
なかなか出来ない濃い体験でもある。
ここからは噴煙も見えないし、噴火があっていることすらわからない。
日ノ尾峠(990m)の頂上
昔は根子岳と高岳がよく見えていたことだろう。
現在は雑木と戦後だろうか植林された杉林に覆われて景色は無い。お陰で夏は涼しく快適な峠道である。
宮地駅方面に少し下るとこのような景色が見える。
別荘地がある開けたところでは、鷲ヶ峰連峰の稜線に高岳がそびえ、その先には生き物のように変化する噴煙が見える。ここが今回のコースで火口に一番近い4キロ地点となる。
宮地駅から阿蘇神社・門前町で最後のエイドは「ラ・ルーチェ」のレモネードと、「たのや」の定番シュークリーム生地にアイスが入ったアイシューが自転車乗りには絶品だ。
門前町から追い風に乗って阿蘇山がよく見える110号で帰った。
9日の朝、道の駅阿蘇でこの日一緒に走った津田さんから、真っ黒になった自転車乗りが水場に急がれていたと聞いた。察するに風向きを考えないで朝一番に草千里に行かれたのだろう。この日は阿蘇駅周辺ですら火山灰が降っていたので坊中線は相当凄い状態だったと思う。その中を走ったものだから汗により火山灰が体中に着き、パリ・ダカールか、雨の日のパリ~ルーベを走ってきたかのようだったのだろう。
南東の風で流される火山灰を避ける阿蘇3峠越えを走られたみなさんは涼しさも絶景にも満足されたようだった。これからも噴煙を避けて快適なサイクリングができるようなコースを考えて紹介していきたい。今の状況ならば仙酔峡は行かないほうがいい。草千里も厳しいかも知れない。南西の風に変わらなければ、日ノ尾や箱石峠付近はこれからも十分楽しめるだろう。もっと遠くから見たいという人は、ミルクロード周辺からもよく眺められるし、小国・南小国付近もサイクリングに絶好のルートがたくさんある。いずれにしても気象条件や風向きを事前に調べて安全に阿蘇ライドを楽しんでいただけたらと思う。
皆様!最後まで読んでいただきありがとうございました。
そして、皆様に朗報です!(^^)!
先日、悪天候の為延期となりました、「コルナゴ部長と阿蘇満喫ライド」第2弾を8月24、25日に開催したします。
ガイドは、もちろん記事を書いているコルナゴ部長です。
参加したい方、ご興味のある方は↓↓↓をチェック
皆様のご参加をお待ちしております(^^♪(^^♪
☆☆阿蘇アクセスルートのおススメはこちら!☆☆
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道路情報や店舗情報など道の駅阿蘇Facebook、道の駅阿蘇ホームページでもお知らせしておりますのでご活用下さい。
道の駅阿蘇(NPO法人ASO田園空間博物館)
TEL:0967-35-5077
阿蘇市内の地図はコチラから
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