■阿蘇山上・阿蘇火山博物館
中央の草原部分が「草千里」、奥に見えるのが烏帽子岳
(写真提供:阿蘇火山博物館)
阿蘇山上の名所として有名な「草千里」、その向かい側に建てられた阿蘇火山博物館は阿蘇山の成り立ち、地形、またそこで暮らしてきた人々の営みを伝える場として昭和57年にオープンしました。年間を通じて国内外より多くの来館者を迎え、阿蘇の魅力を発信し続けています。
この火山博も熊本地震の際には甚大な被害を受けることとなりました。
博物館運営スタッフの一人である溝口千花課長にお話を伺いました。
「地震の起こったあの日、阿蘇山上に位置する館がどうなったのか、真っ先に脳裏をよぎりました。すぐに確認に向かいたいという衝動に駆られながら、登山道は地震によって損壊、車両を用いることができず、放牧のための牧野道を他のスタッフと共に徒歩で向かうこととなりました。地震直後のこと、安全を慎重に確認しながら道程だったので大変な時間がかかったことを覚えています。」
研究室収蔵品の倒壊 (写真提供:阿蘇火山博物館)
「無論、本当に大変だったのは館に到着した後。展示室や収蔵庫、事務室含め地震によって揺すられ、荒らされた後継に呆然自失となりました。この後どのような対応をとっていくべきか、開館は当面は無理、そこで地震の発生した約一カ月後の4月19日に、阿蘇山の麓、小里地区の草原学習センターの一部をお借りして仮事務所を設置し、対策を練ることとしました。」
展示物の被害(写真提供:阿蘇火山博物館)
「歴史ある館が危機に立たされた現状、途方に暮れるような状況ではありましたが、スタッフ一同、「今何ができるか、出来ることを一歩一歩積み重ねていこう」と地道な作業に従事していくこととなりました。6月1日からは旧役犬原小学校に仮事務所を移行するなどその時々の状況を踏まえながら復興に向けた作業を少しずつ進めていきました。」
「同年の9月16日には登山道(県道111号線)の一部が開通し、博物館への交通路も確保できたので業務再開の準備も本格化していきました。それから一月程たった10月8日には阿蘇中岳で36年ぶりの比較的大きな噴火を生じ、その影響を受けて作業に一時滞りも生じましたが、火山活動とともにある館としての役割を再度実感したのもこのときです。建物の修復も完全とは言えない状況ではありましたが、11月1日には仮オープンすることになんとかこぎつけました。内外から受ける開館の要望と激励がその原動力となっています。」
現在の博物館エントランス
博物館1Fにオープンした阿蘇山上ビジターセンター
「仮オープンの後、徐々に館内外の修復を進めてまいりましたので、現在では地震前と同じ状態での営業が可能となっています。平成31年3月17日には博物館1階フロアに「阿蘇山上ビジターセンター」もオープン。火山だけでなく、阿蘇の自然環境に関する情報もより充実させ提供できるようになりました。」
草千里展望所からの眺め 阿蘇登山道も無事復旧
「地震の後にも阿蘇山の活発な火山活動が観測され、噴煙・ガスの影響もあって一時は火口淵までの見学ができなくなってきています。そこで博物館では、現在、火山の魅力と共に安全性も伝えられるよう、様々な取り組みを行っています。
火山博は阿蘇の壮大な景観、人々への恵みを伝える場所であると同時に、火山の厳しさを最もその実感する施設でもあるのです。」
火山博館長である池辺伸一郎博士からもお言葉を預かっています。
(写真提供:阿蘇火山博物館)
「熊本地震を乗り越えやっとここまで戻ってくることができました。これもひとえに関係者、およびこの火山博にご期待をいただいている皆様のお力添えのお陰であると感謝申し上げています。
今後、当館では単純に復興し、地震以前の状態に戻すというだけではなく時代の要請に応える形で様々な事業を充実、実現させていきたいと考えています。
常設展の整備は勿論、シアターの案内映像ではインバウンドを意識した多言語での上映、また、VRを使った火口のライブ映像、阿蘇各地の自然の映像の無料提供、トレッキングコースの提案など火口見学だけではない阿蘇の魅力を体感できるようにしています。皆様のご来館をお待ちしております。」
【阿蘇火山博物館】
住所:熊本県阿蘇市赤水1930-1
TEL:0967-34-2111
駐車場:あり(有料)
トイレ:あり