コルナゴ部長こと中尾公一さんから最新レポートが届きました「阿蘇ライドの雨天対策を考える」です。
サイクリングにいらっしゃった方へ、雨が降ったらどんなプランをご紹介しようか・・・と、コルナゴ部長は考えています。
お申込みいただいた方が満足するプランをいつも考えてくださっています。それではご覧ください!
阿蘇が舞台となった「劇場版弱虫ペダル」で知り合った横浜のミズキさんは「輪“s企画」という個人で主催する非営利の自転車イベント事業をされている。スタッフの方もすべてボランティアでスキルアップスクール、サイクリングツアー、合宿、トークイベント、自転車作品の聖地巡礼ツアーなど、自転車に関わるユニークな企画・運営をされている。昨年、そのようなご縁もあって劇場版弱虫ペダルのオンライントークイベントをさせていただいた。参加された方の阿蘇への関心は高く、スパークル大分のファンも多いことから、阿蘇・大分への自転車遠征ツアーの下見に来られた。
遠征は3泊5日のJR輪行。初日は新幹線と日豊本線で夕方遅く大分入りし、翌日はスパークル大分のクラブハウスでアポを取っていた黒枝監督と黒枝士揮選手と面会され、居心地のいいクラブハウス内のCOLORS Cafe&Bikeのランチとオリジナル珈琲や、メカニックの吉田柊哉さんとの会話など、関東方面のスパークルファンにとって九州遠征の素敵な訪問先になったようだ。
阿蘇でのサイクリングは阿蘇山方面と瀬の本方面を2日間に分けて案内した。ちょうど沖縄の大城さんから退職記念に九州遠征をされている佐久本さんを紹介されていたので、初日のサイクリングの途中に合流して夜は軽木さんの隠れ家を借りて、ミズキさん、佐久本さん、それに井上君やミユキさんも誘ってBBQで盛り上がった。
3日目は2名とも牧野ライドを体験してもらおうと思っていた。ところが前日の天気予報は100%雨でかなり期待されていたが流れてしまった。これは滞在型の方を案内する際によくあることで、天気が良くないときの阿蘇でのプランはなく、遠征を切り上げるか宿で悶々と時間をつぶしかない。雨が降ればガイドの仕事も消えてしまうわけだから、阿蘇を離れてでも参加者を楽しませるプランの必要性をいつもながら痛感した。
以前来られたことがあるシンガポールの自転車乗り18名が5月に再訪される。行程は阿蘇へ4泊、湯布院に3泊でハードケースに入れたロードバイクの輪行で宿泊施設の情報や送迎用のバス会社を教えていた。
阿蘇でのサイクリングガイドは私が担当し、湯布院方面は大分サイクルツアー「Ring」の藤野さん、滞在される間のサポートカーは南阿蘇の山内君に担当してもらう。そこで打ち合わせをしている際に雨天対策を話し合った。せっかく遠くから来られるわけだから、雨天のプランも考えておくと喜ばれるかも知れないしガイドとしての仕事も出来る。無策では互いのメリットはゼロになる。
そこで話し合ったが雨天の阿蘇では代替えとなるプランは思いつかない。車窓から雨の外輪山や阿蘇山は霧の中にいるようなもので何も見えない。熊本市内まで行って定番観光地巡りか、ショッピングか・・・大分でサイクルツアーをされている藤野さんも雨天での代替えとなるプランは考えたことがないと言われた。シンガポールの方が以前来られた時や、2019年にインドネシアのサイクリストグループが来られた時は有田焼の窯元巡りでも案内しようかとぼんやり思った時もあった。
全国で一番焼き鳥屋の多い久留米のグルメナイトや、風情ある白壁の街並みの八女の散策、本玉露とリーデルのシャンパングラスで楽しむ星野村のお茶体験の3つセットにしたイベントを、久留米の自転者仲間に何度か企画してもらいレポートしていた。1年くらい前にそれを見た家内の友子さんが星野村のお茶体験を友達としたいとリクエストがあったので手配して参加した女性5名は大好評だった。
今回は友子さんから友人2名と久留米グルメナイトと、翌日は八女の街並み歩きをして、午後から星野村のお茶体験という宿泊を兼ねた3つの体験リクエストがあった。そこで久留米の自転車仲間のKeiさんに相談すると久留米と八女の案内を快く引き受けてくれた。お茶体験を主宰され、自転車仲間でもある星野村の木屋芳友園の木屋さんも忙しいなか八女伝統本玉露体験を了解していただいた。この3つの体験は阿蘇から2時間弱で行ける距離なので、阿蘇ライドの雨天対策としてのプランを視野に同行してきた。
1日目は16時前に菊池を出て17時30分から久留米の自転車仲間のKeiさんの案内で1軒目の餃子屋に入店、続いて焼き鳥のコース料理店、その後は気分転換にカラオケで盛り上がり、2軒目の焼き鳥屋へ突入して、締めは久留米ラーメンを食べ歩くフルコースだった。いずれも人気店なので地元の方の案内がないと効率よくは回れない。友子さんの友達2名は仕事を持つ50歳代の主婦、なので日頃忙しく数年振りの夜の繁華街であり初めての久留米ナイトに大満足だった。
翌日は水天宮から耳納連山の西端にある高良山(こうらさん)にある高良大社に行った。一帯は熊本でいえば金峰山のようなものでヒルクライムコースとして自転車乗りが多いところだ。朝一でまずは筑後平野を上から眺めた。天然記念物の久留米ツツジ原木群を見せてやりたがったが開花には早かったものの平戸ツツジは美しく山を染めていた。
八女郡広川町に移動してKeiさんおすすめの八女の特産である竹のすだれや、すだれ生地の小物、籐家具や編み生地を使用したインテリアを展示する鹿田産業のショールーム「SHIKADA SHITSURAI」を訪ねた。館内に入りと77mのすだれが描く優美な曲線に圧倒された。このオーロラのようなデザインを含む設計は建築家の隈研吾さんによるものだ。
外から見えにくく、中からの透過性がいいすだれは、隔離しないパーティションとして星野リゾートの宿泊施設に採用されている。
こちらも隈研吾さんデザインの籐の椅子
この曲線は腰に優しい
ホテルのラウンジを想定されている
鹿田産業は1912年の創業以来111年間、地域資源である竹からつくる「八女すだれ」を生産されている。現在は2020年の欧州展示会をきっかけに、天然素材を用いた建具や壁材の内装素材のニーズに応えるべくサステナブルな素材として商品開発をされている。
ショールームにはショップスペースがあり、ホテル備品に適した竹素材や籐素材をつかった小物や工芸品が販売されており、外国人サイクリスト向けにもよさそうだった。特に絵画のように吊った八女すだれは和洋問わず空間に映えるインテリアとして際立っていた。
次に行ったのは丘の上から眺める八女中央大茶園、撮り忘れたので以前の写真
昼食を兼ねて1587年築城された福島城の城下町として栄え、「居蔵」と呼ばれる瓦屋根の土蔵造りの町屋が特徴の八女福島の街並みを散策した。ランチはKeiさんおすすめのミシュランにも掲載された「そば季里史蔵」。人気店のためKeiさんが席取りに並ばれたので、時間まで近くにある屋久杉の一枚板で作られた欄間や柿の床柱や紫檀が美しい堺屋を見学した。
古民家を改装したような雰囲気の店内は、カウンター席や座敷、2階もあったが、Keiさんが開店30分前から並んでくれたので一番客として入ってすぐの土間のテーブル席を確保できた。メニュは冷そば、冷ぶっかけ、つけめん、冷かけ、温そばがあり、皆さんは香りが楽しめる冷たいそばを温かいつゆで食べるつけめん(1300円)にされ、私は暖まりたくて温そばの鴨南蛮そば(1300円)を注文、出汁もそばも美味しくてぽかぽかになった。外国人サイクリストには評価が高いのは間違いなさそうだが同席では5名程度が限度だろう。
八女伝統工芸館で福島仏壇や八女すだれを見学、3人には長い藤棚も少し早かったが好評だった。
「鬼滅の刃」の聖地とされる筑後市の溝口竈門神社がこの日の三社参りの最後となった。
最後に14時に予約していた星野村の木屋芳友園の星水庵に行った。新緑のドウダンツツジが美しい庭に車を停めると春風に揺れる暖簾の前で代表の日本茶鑑定士である木屋康彦さんに出迎えていただいた。
ここが玉露の名産地として有名な八女市星野村の木屋芳友園にある茶房「星水庵」。この雰囲気で木屋さんの優しく穏やかに語られる星野のお茶の物語と、八女茶の真髄を解りやすく茶の匠が説明される。
世紀のフレンチシェフと称されたジョエル・ロブションが生前最後に認めた食材が八女伝統本玉露である。2017年このお茶を初めて体験したシェフは、その場で称賛して「このお茶を世界中に伝えたい」と言われたという。
そこで木屋さんの挑戦が始まり、渡米してカリフォルニアの有名レストランとコラボした料理とのペアリングへ進化し、星野の茶房でこのようなスタイルで八女茶を体験することができるようになった。
八女伝統本玉露体験の最初の一品はリーデルのシャンパングラスで頂く水出し煎茶。木屋さんは出す前にいつもこういわれる、「では少し遊んでみましょう」と。前日から仕込んだ煎茶「新茶さえみどり」を目の前でソーダマシンの豪快な音とともにスパークされる。私は木屋さんのお茶体験は5回目と記憶するが、まさにスパークリングワインのような最初の一口で感動に包まれてしまう。それは香り豊かで旨味が放つ新しい泡系の飲み物ということ。毎度のことながらお茶という常識を超えた美味しさに圧倒されてしまう。
八女茶伝統本玉露 星野しずくの熟成茶。
これは写真で伝えるのが難しい。本玉露の熟成茶が有田焼の磁器の底に数滴凝縮されているだけ。最高級品の茶葉が熱くも冷たくもない木屋さんの勘と感による温かさの湯でうま味成分が引き出されている。それはまるで出汁。これを極限まで薄くされた飲み口の有田焼で啜る(すする)。だから啜り茶ともいわれる。一煎目で目が丸くなり、二煎目で目が閉じ、三煎目で美味しいとやっと表現ができる。四煎目、五煎目、まだ美味しいお茶である。最初の一滴の衝撃は誰しも唖然となるほどうまいと口をそろえる。
そのあとは、
糸島の天然塩で旨味を残した茶葉を「食べる」という一品。
素朴な味わい。まるでお浸し、何も残らない。
この日のためにお付き合いの菓子工房に頼まれた和菓子。
「今、お茶体験している」ことを思い出す。
「品書きにはありませんが」と、フィルターインボトルで淹れた水出し煎茶「茶の匠芳友」をリーデルのリースリングタイプの中でも一番薄いグラスで頂く。気品ある爽やかな旨味はソーダマシンでスパークした煎茶とともに食事の際の飲み物として世界中の人に愛されるであろう。ちなみに265年以上の歴史を誇るワイングラスの老舗、リーデル社の社長もオーストリア本社から体験に来られているし、ニューヨークから茶葉の買い付けに来られた方と同席したこともある。
最後は陶器の薫る器 香貴で頂く焙じ茶「星之音」、ほっと心豊かなる一品。
佳き90分の体験になった3人の主婦のみなさん。
昨日は16時に菊池を出て久留米ナイトで1泊、この日はてんこ盛りの体験のあと17時には帰り着いた。充実した非日常的な体験には時間に無駄がない案内が必要、私もkeiさんもボランティガイドであるが、今回のツアーの一人当たり総額費用は18000円也。
女性3人が体験した1泊2日の今回のコース、もしくはそれぞれの3つのプランは阿蘇ライドの雨天対策にいいのではないかと考えていた。旅先でのサイクリングは天気に左右されるので、「どこを走るか」というよりも「どう楽しむか」であり、前日の予報で雨の場合自転車はさっさと諦めて、楽しさが期待できる体験に切り替えると雨でも充実した1日になるかも知れない。
シンガポールサイクリストの雨対策としては、すだれ生地の小物、籐家具や編み生地を使用したインテリアを展示する鹿田産業のショールーム「SHIKADA SHITSURAI」は時間を掛けて見に行く価値はあると思った。ただメインとなるのはリーデルのシャンパングラスで飲むお茶体験「八女伝統本玉露体験」である。服装も堅苦しい作法もなく、食事の際の飲み物として考えられたものなのでサイクリストには相性がいいと思っている。
木屋さんの水出し煎茶は世界中で展開できるように水はクリスタルガイザーやボルヴィックなどミネラルウォーターで淹れられるようになっている。スパークリング系はソーダマシンやペリエで出来るので同じ茶葉さえ買って帰るとどこでも再現することができる。特に熟成茶はウィスキーやワインのように10年以上熟成された秘蔵茶葉もある。ただし、100gでそれなりのロードバイクが買える値段ではあるが、ロマネコンティなどを飲まれる方にとっては健康的な普通の飲み物になるだろう。
今回の雨天対策の収穫として確実なのは「SHIKADA SHITSURAI」であり、お茶体験は木屋さんのスケジュールによるが、忙しい方なので直前には無理であり、事前に予約可能日に合わせて行くしかなく雨天対策にはならないが、半日潰してでも一度体験する価値は大いにあると思う。
外国人サイクリストに阿蘇をリピートしてもらうためには、日帰り、もしくは1泊で九州各地を案内できる雨天プランが必要だと今までの経験で感じている。そのためにも来月のシンガポールのみなさんの雨の日を想定して九州の自転車仲間と連携した取り組みを考えていきたい。
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