コルナゴ部長こと中尾公一さんから最新レポート「野焼きライド」が届きました。
阿蘇に春の訪れを告げる「野焼き」が、今年も無事に終了しました。
阿蘇の道を知り尽くしているコルナゴ部長が、サイクリストの方々をご案内しました★
雨天で延期された阿蘇山麓と、ミルクロード周辺の北外輪山の野焼きが3月3日に開催されたので、阿蘇満喫ライドとして野焼きの後の坊中線、阿蘇パノラマラインを走ってきた。北外輪山の野焼きが行われる際にはミルクロードは通行止めになる。阿蘇山麓では赤水線は通行止めになるが、道の駅阿蘇から草千里・中岳火口に通じる坊中線は、停まって見学するのは野焼きの妨げになるので不可だが、車やバイク・自転車で通行するだけであれば通ることは可能だ。しかし、現実的には写真の一牧も撮りたいので、野焼きが終わった後を走るコースで千年以上の歴史がある阿蘇の風物詩を目の当たりにしてきた。
当日は雲ひとつない澄み切った晴天の朝になった。9時の火入れと同時に阿蘇山麓のいたるところから煙が上がった。左の山頂の雲みたいに見えるのは中岳の噴煙、右が野焼きの煙、西風になびきながら私たちを歓迎の狼煙で迎えるようだった。
コースは道の駅阿蘇をスタートして212号から7.6kmの一直線の農免道路へ、赤水の149号を9.2km走って垂玉温泉・地獄温泉の標識を左折、ここから上りが始まり吉田線へ合流してから坊中線まで11.3kmのヒルクライムになる。坊中線に出てから草千里展望所を過ぎると道の駅阿蘇まで12.5kmのダウンヒルでゴールする距離49km・獲得標高930mのコースになる。メインとなるのは草千里付近からのダウンヒルで野焼きの後の墨色の世界を全身で受け止めるライドだ。
参加された野焼きライド常連の方も初めての方も2つの歓迎の狼煙の合図でスタートした。212号から農免道路に出ると、強い向かい風を受けながら7.6km走った。左側に見える阿蘇山麓ではずっと煙が立ち昇っていたが、右側の北外輪山に煙は無く、雪が残っていたところもあって草が乾く午後からの火入れとその時は思っていた。しかし、ラピュタと呼ばれていた北外輪山の一角である狩尾峠の野焼きに参加した際に、午前中はミルクロードの北東部の平坦な牧野を焼いて、阿蘇谷から見える北外輪山は昼食後の午後からだったことを思い出した。
2014年ラピュタの野焼き
赤水から149号を走って赤水線から別れる299号の4差路付近の民家の横で地元消防団の方が野焼き後の見守りをされていた。先の方からは、枯草(萱・かや)が爆ぜて燃える音と煙と熱風、それに勢いよく空に舞い上がって降りかかる真っ黒の灰、1年振りの野焼きとの遭遇だった。
垂玉温泉・地獄温泉への上りが始まるとすぐに神楽の里公園がありそこで休憩した。ここに植えられた河津桜のまぶしい薄ピンク色の花が満開になっていた。阿蘇にも野焼き、新高菜とともに春の彩が始まってきたようだ。
3km上ると垂玉温泉に着いた。
夏にはクールダウンでお世話になる金龍の滝の横には氷柱(つらら)もあった。
金龍の滝の向かいには、熊本地震で大きな被害を受けた垂玉温泉山口旅館があったが、現在は日帰り温泉施設「瀧日和」として営業再開されている。
明治19年創業の垂玉温泉山口旅館は、熊本・阿蘇の秘湯の宿として親しまれ、当時多くの文人も訪れたことを温泉受付の建物に紹介されている。与謝野鉄幹、北原白秋、吉井勇、木下杢太郎、平野万里が山口旅館に宿泊し、紀行文「五足の靴」に当時の宿の様子が書かれている。
「・・・くるりと道が廻ると忽然として山塞が顕れた。(中略)高く堅牢な石垣の具合、黒く厳しい山門の様子、古めいた家の作り、辺りの要害といひ如何見ても城郭である。天が下を震わせた豪族の本陣らしい所に一味の優しさを加えた趣がある。これが垂玉の湯である。名も良いが実に大いに気に入った。」
瀧日和に入るとすぐに天正年間(1573〜1592)まで遡る金龍の滝壺にある垂玉温泉の源泉の歴史とともに、中岳火口に最も近い秘湯であること示すような当時のまま蒸気が噴き出すところがある。ここを訪ねるときはいつも自転車なので、日帰り温泉を利用したことはないがこの蒸気に包まれていると、垂玉の湯は文人たちが頷く気分になれるのだろうと感じる。
垂玉温泉に隣接して地獄温泉がある。これは源泉が異なるために別の温泉として扱われていることから名称が違う。
昼食は地獄温泉青風荘の離れのレストラン山竈(やまくど)で取ることにした。ここは2回このライドで利用したことがあって、レストランに鎮座する竈(かまど)で炊いたご飯と、夏はそうめんが抜群に美味しかったことが印象に残っていた。
ちょっと高級な雰囲気の割には値段も手ごろでメニュもおもしろい。大抵ありそうな、だご汁とか、高菜飯とか、チャンポンとか。何とかカレーがないのがいい。
開店の30分前に着いたので温泉の受付で時間を潰した。メンバーは9名だったのでなるだけ早く料理を出せるようスタッフの方がメニュを渡された。
かまど炊きおにぎりと猪汁 1320円
かまど炊きおにぎりとあか牛のコンソメ 1650円
地獄のオムライス 1320円
阿蘇さとう農園のしろひつじのクスクス 1320円
特に「阿蘇さとう農園のしろひつじのクスクス」、「しろひつじ?」と「クスクス?」これは写真がないので誰もイメージできなかったので尋ねたら、「今日は」と「パスタ」の2つのワードが聞こえたところで入浴の人が来たので話が止まった。思い浮かんだのは、今日はパスタの上に北アフリカあたりが発祥のクスクスがトッピングされているのだろうと解釈して3名がクスクス、あとは無難そうなオムライスに決めた。
開店の案内で店内に入るとすぐに「地獄のオムライス」が運ばれてきた。「地獄」とは地元では地獄温泉のことを略してそう言うので特に辛いものではなかった。見た目も風味も良く、味はこんな山奥なのに街中で食べる以上にお洒落で洗練され、卵のまろやかさとデミグラスソースの濃厚さの調和がとても良く地獄温泉こだわりのオムライスだった。
続いて「阿蘇さとう農園のしろひつじのクスクス」が運ばれてきた。大きな木製の丼に根菜がいっぱい入って粉チーズがトッピングされている。その下にクスクスがあるのか?
食べる前に料理をサービスする人に尋ねると「世界最初のパスタがクスクスです」と、粉チーズと思っていたのがクスクスだった。「しろひつじ」は白い羊でその肉が根菜と同じ大きさに切ってある。私はオムライスだったがそう聞くと気になってきた。阿蘇の根菜と阿蘇山ブランド羊肉、そして世界最小のパスタ、クスクスを木製のレンゲで混然一体に食べている人を見ると実に旨そうである。後から来た常連風の人は、入ってくるなりクスクスを注文していたのでこの店の看板メニュなのかも知れない。
次回は迷わず白羊と世界最小パスタである。
青風荘から600m先に環境省が建設し完成したばかりの地獄温泉の源泉を観察できる「地獄温泉源泉散策路」に立ち寄った。
地獄温泉の源泉は、その上部に旧爆裂火口跡があり、火山ガスが噴出し草木の生えない地獄地帯になっている。地獄温泉は1803年に発見され、その掟によると、当時は熊本藩士及び僧侶のみ入湯が許可されていたそうだ。明治以降は一般にも開放され200年以上にわたり湯治場として利用されている。
わいた温泉郷の集落が湯けむりに包まれる岳の湯付近に比べると物足りないが、散策路は今後延長されるとのことなので期待したい。
地獄温泉源泉散策路から陥没したところもある荒れた道の上りになるので注意が必要。
しばらく走ると平坦になり明るい草原景観のフォトポイントになる。
そのまま走ると吉田線に合流し緩やかな上りが続く。
火の山トンネルの下で野焼きの煙が見えてきた。
坊中線に出ると阿蘇山上ターミナル付近や古坊中跡で野焼きの煙や炎が見えた。ここは焼けたばかりのスキー場跡、背景は中岳火口からの噴煙。
さあ、いよいよ阿蘇パノラマラインの野焼きの中を走る。
ローストした米塚バックに記念撮影
野焼きライドのメインディッシュを最後に15時過ぎにゴールした。草千里からは気温0℃のダウンヒルで今年一番の寒さだった。カチカチに震えながらもご機嫌な私たちが見たものは、大火のあとのような光景だった。それは千年続く野焼きだから千年前と同じ景色が正しい喩えか。そんな煤が舞い煙燻ぶる阿蘇の野焼きの後をこの目で見、匂い、肌で感じてきた。
3月17日の阿蘇満喫ライドでは、野焼きの際に通行止めだったミルクロードと赤水線を走り、そしてもう一度坊中線をダウンヒルして3箇所の野焼きの後を走る。まだ黒々としているので焼け焦げた阿蘇を見たい人は道の駅阿蘇のHPよりエントリーの程。
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道の駅阿蘇(NPO法人ASO田園空間博物館)
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